新宿区立林芙美子記念館

作家の足跡と四季の庭

林芙美子記念館は、小説家・林芙美子が昭和16年から昭和26年に亡くなるまで暮らした家を公開している施設です。『放浪記』や『浮雲』といった作品で知られる芙美子が実際に住んでいた場所で、彼女の創作活動や生活の一端を感じることができます。

芙美子は若くして上京し、数々の困難を乗り越えながらも作家として大きな成功を収めました。この家は、芙美子自身が強い思いを込めて設計者や職人とともに建てたもので、彼女の好みが反映された数寄屋造りの建物です。京風の特徴を持ちながら、どこか民家らしい親しみやすさがあり、訪れる人々に落ち着いた雰囲気を提供してくれます。庭園も大きな見どころの一つで、芙美子が自ら購入したざくろやカルミア、親友から贈られたオリーブの木が今も元気に育っています。また、四季折々に咲く可憐な山野草が庭を彩り、訪れるたびに違った風景が楽しめるんです。

記念館では、林芙美子の作品や遺品が定期的に展示されています。彼女の夫である画家・緑敏が使用していたアトリエも公開されており、その中では新宿歴史博物館から貸し出された貴重な資料が年に数回展示替えされます。作品だけでなく、彼女が使っていた日用品や書き残したメモなど、彼女の生活を垣間見ることができるアイテムが揃っているため、より身近に芙美子の人物像を感じ取ることができるかもしれません。

通常は建物内に立ち入ることはできませんが、春と秋には特別公開が行われ、予約をすれば内部をじっくり見学することができます。この機会には、芙美子が実際に過ごした部屋を体感し、当時の生活に思いを馳せることができるんです。特に作家を目指す子どもたちにとっては、芙美子の住まいや創作の空間に触れることが、大きなインスピレーションになるかもしれません。

林芙美子記念館は、都会の喧騒を忘れさせる静かな場所にあります。アクセスも良く、西武新宿線の中井駅から徒歩わずか7〜8分の距離。石垣と土塀に囲まれたその敷地に足を踏み入れると、まるで別世界に来たような気持ちになるかもしれません。