松本城

松本城の歴史と魅力

長野県松本市に位置する松本城は、国宝に指定されている5つの城のひとつです。現存する五重六階の天守を持つ城としては、日本最古のものなんです。松本城の歴史は戦国時代に遡り、元は「深志城」と呼ばれていました。

深志城は、1504年に信濃守護の小笠原氏によって築かれました。当時、信濃府中と呼ばれた井川の館から、より防衛に適した東山麓の林に移ったことで、家臣たちが林城を中心に防御を固めるために建てたのが深志城です。その後、武田信玄が小笠原氏を追い払い、この城を信濃支配の拠点としました。しかし、1582年に本能寺の変が起こり、混乱に乗じて小笠原貞慶が城を奪回し、名前を松本城と改めました。

1590年、豊臣秀吉が天下を統一すると、徳川家康は関東に移封されました。その際、松本城主であった小笠原秀政も下総へ移動し、代わりに石川数正とその子の康長が入城しました。彼らは城と城下町の整備を進め、現在のような近世城郭の基礎を築きました。特に天守の建造は康長の代に進められ、1593年から1594年にかけて完成したと考えられています。

松本城の構造は非常に独特です。天守は五重六階で、その隣には乾小天守（いぬいこてんしゅ）、渡櫓（わたりやぐら）、辰巳附櫓（たつみつけやぐら）、月見櫓（つきみやぐら）が複合されています。これらの建物が一体となって、城の防御力を高めていたのです。特に黒い漆塗りの外観は、「烏城（からすじょう）」という愛称でも親しまれ、白い漆喰とのコントラストが美しいことで有名です。

松本城は市民のシンボルであり、歴史を通じて何度も存続の危機を迎えましたが、その度に市民の努力で守られてきました。明治時代には一部が取り壊される危機に直面しましたが、市民が保存のために資金を募り、城を購入して守りました。また、昭和時代には大規模な修復作業が行われ、現在もその美しい姿を保っています。

松本城は観光地としても人気があります。天守閣からは北アルプスの美しい山々や松本市街を一望でき、歴史と自然を同時に楽しむことができます。城下町には白壁と黒なまこの土蔵が並び、昔ながらの風情を感じることができます。なわて通り商店街や湧水群など、多くの見どころもあります。夜にはライトアップされ、その姿はさらに幻想的です。